一人ひとりの「一歩」に寄り添う

キーワード: 2026年8月31日

リッツで支援に向き合う3人にお話を伺いました


座談会にご参加いただいた皆さん(左から榎本さん、三谷さん、北川さん)
座談会にご参加いただいた皆さん(左から榎本さん、三谷さん、北川さん)

Q. まずは、皆さんが現在どのようなお仕事を担当されているのか教えてください。

榎本:私はサービス管理責任者として、ご利用者一人ひとりの個別支援計画を作成しています。また、職員が働きやすい環境づくりや、ご利用者との面談を通じて、自立訓練をご利用の方が安心して通える環境づくり、就労移行支援をご利用の方が就職に向けて前向きに取り組める環境づくりを、職員みんなと協力しながら進めています。事業所によって異なるとは思いますが、私は支援計画の作成には現場を知らなければ難しいと感じ、実際に現場に入りながら利用者さんと関わることを大切にしています。

北川:私は就労移行支援の職業指導員を担当しており、利用者さんが就職を目指すための訓練を行っています。内容は本当に幅広くて、ビジネスマナーを学ぶプログラムもありますし、長く働き続けるためには「心が折れない」ことも大切なので、メンタル面について学ぶプログラムも行っています。また、実際の仕事を想定した作業訓練として、仕分け作業なども行っていますよ。ただ、私たちが一番大切にしているのは、「就職すること」だけではないと思っています。就職は、ご本人だけの力でもできるかもしれません。でも、その先で長く働き続ける力を身につけていただくことが、私たちの役割だと思っています。そのために、さまざまな角度からサポートしていますね。

三谷:私の担当は自立訓練ですね。自立訓練は一人で生活できるようになるためのトレーニングが中心になります。リッツでは自立訓練と就労移行支援を組み合わせて利用される方も多くいらっしゃいますが、現在自立訓練を利用されている方は、すぐに就職を目指すというよりも、その前段階として生活の土台づくりが必要な方が多いですね。そのため、就労移行支援へ進むための準備という位置づけでプログラムを考えています。

Q. 同じ支援の中でも、一人ひとりに合わせて内容を変えているのでしょうか。

北川:個別で行うものもありますし、グループで行うものもあります。例えば事務職を目指している方には、パソコンでデータ入力の練習をしていただきます。一方で、手先を使う作業が得意な方には、ビーズの仕分けなど、集中力や持続力を養える訓練を行っています。ご本人の希望と必要な訓練、その両方を考えながら、「この方には何が一番合っているか」をスタッフ全員で相談して決めています。

榎本:一人ひとりに合わせてという事だと、必要に応じて「訪問支援」を行うこともあります。さらに「就労移行支援」では、精神障がいのある方などで、人とのコミュニケーションが原因となって就労が難しくなった方もいらっしゃいます。そうした方には、「Zoom」を活用した支援を行ったり、通所されている方と同じプログラムや作業訓練を受けられるようにしたりと、一人ひとりに合わせて幅広い支援を行っています。

終始、和やかな雰囲気で進んだ座談会
終始、和やかな雰囲気で進んだ座談会

Q. 皆さんが利用者さんと関わるうえで大切にしていることなんでしょう。

榎本:私は、「何でも話せる存在」でありたいと思っています。利用者さんが「榎本さんなら相談できる」と思ってもらえるよう、「話しやすい雰囲気づくり」を一番大切にしています。

三谷:何気ない一言で、自信を失ってしまう方もいます。例えば英語の授業で、発音を間違えたことで周りに笑われ、それがきっかけで英語が苦手になってしまった、という話を聞くことがあります。だからこそ、「できないこと」を責めるのではなく、「できなくても大丈夫」という姿勢で接することを大切にしています。利用者さんの中には、不登校を経験された方もいますし、「一般的には知っているはず」と思われることを知らない方もいます。だからこそ、「知らないこと」を前提に接するのではなく、「知らなくても大丈夫」という気持ちで関わるようにしています。

北川:三谷先生のお話聞き入っちゃいましたね。私自身はそうですね、まず受け止めることだと考えています。一見すると「それは良くない行動だ」と思うことでも、ご本人なりの理由があります。例えば、物を乱暴に扱ってしまった時でも、すぐに注意するのではなく、「なぜそうしたのか」をまず一緒に考えます。その理由を知ることが、支援の第一歩だと思っています。

Q. まず受け止めることを大切にする一方で、社会へ出ていくためには、時には伝えなければならないこともあると思います。その点については、どのように考えていますか。

北川:そこが一番難しいところです。私はもともとカウンセリングを学んできたので、「受け止めること」の大切さはよく分かっています。でも、受け止めるだけでは成長につながらないこともあります。だから、「今は受け止めるタイミングなのか」「今は伝えるべきタイミングなのか」を、いつも考えています。就労移行支援では、利用者さんが社会の中で認められる行動を身につける必要があります。信頼関係を壊さずに、必要なことをどう伝えるか。それが一番難しく、そして一番大切にしていることでもあります。

三谷:私は、あえて利用者さんと近づきすぎないことを意識しています。もちろん信頼関係は大切です。でも、友達のような距離感になってしまうと、お互いに良くないこともあります。例えば、お金を貸してほしいと言われても、それは支援員としてできることではありません。だからこそ、「信頼される支援員」でありながら、「支援員と利用者」という適切な距離感を保つことを大切にしています。仕事としてできることと、個人的な関わりは分けて考えるようにしていますね。

Q. 利用者さん自身の力を尊重するという意味では、どんなことを意識されていますか。

三谷:私は「教える」というよりは、ご本人が主体的に動けるよう支えることが大切だと思っています。

榎本さん(サービス管理責任者)
榎本さん(サービス管理責任者)

北川:一つに絞るのは難しいですが、「自分で人生を選べるようになること」を大切にしています。「先生が言ったから」ではなく、「自分で決めたから」という気持ちで人生を歩んでほしいんです。就労移行支援は利用期間が限られています。だからこそ、ここを卒業した後も、自分で考え、自分で選択できる力を身につけてほしいと思っています。

榎本:「自分の一歩」と「利用者さんの一歩」は違う、ということです。これは障害福祉の仕事に携わるようになって強く感じるようになりました。私にとっては小さな一歩でも、その方にとっては、とても大きな挑戦であることがあります。だからこそ、その方の歩幅に合わせて支援することの大切さを学びました。

私は利用者さんと同じ経験をしてきたわけではありません。例えば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えている方や、大切なご家族を事故で亡くされた方の気持ちを、私が完全に理解することはできません。だからといって、「理解できないから寄り添えない」とは思っていません。理解しようと努力し、その方に寄り添いたいという気持ちは常に持っています。その方の人生そのものになることはできませんが、その方が目指す未来に向かって、自分にできることは精一杯していきたいと思っています。

Q. 皆さんが利用者さんと関わる中で、成長や変化を感じてうれしかった出来事はありますか。

北川:もちろん、一番大きな達成感は、利用者さんが就職された時だと思います。でも、今はその前段階の変化が何よりうれしいですね。利用を始めた頃は自己肯定感が低く、ほとんど話せなかった方が、少しずつスタッフと話せるようになり、やがて他の支援員にも笑顔を向けてくださるようになる。そういう日々の変化を見ることが、今は一番の喜びです。

榎本:高校時代には学校へ通えなかった方が、今では毎日通所できるようになっているケースもあります。そういう姿を見ると、「環境によって人は変われるんだな」と感じます。また、以前担当していた利用者さんが、今こうして少しずつ成長されている姿を見ることができるのも、この仕事ならではの喜びだと思っています。

Q. 就職などの大きな目標だけではなく、日々の中にある小さな変化も大切にされているんですね。支援を通して、利用者さんの新しい一面が見えたこともありますか。

北川:例えば今日は、「自分の強みを見つける」というプログラムを行いました。多くの方は、自分の短所はすぐに言えるのですが、「自分の長所は?」と聞かれると、意外と答えられません。そこで、さまざまな強みを書いたカードを使いながら、「これが当てはまるんじゃないかな」と一緒に考えていきました。さらにグループワークも取り入れました。自分では欠点だと思っていることでも、周りのメンバーから「ここがあなたの良いところ」と伝えてもらうことで、新しい気づきにつながります。利用者さんからは、「このカードを写真に撮って持ち帰ってもいいですか」と言われたんです。自己肯定感につながるきっかけになったのかなと思い、とてもうれしかったですね。

榎本:私の印象に残っているのは、「他者承認」をテーマにしたプログラムでです。利用者さん同士で、お互いの良いところを書き出して伝え合う内容だったのですが、そのプログラムが終わった後、利用者さんから「先生たちの良いところも書きたい」と言ってくださったんです。ホワイトボードに先生たち一人ひとりの良いところを書いてくれて、その中で私には「榎本さんは相談しやすい」と書いてくれました。私自身、「何でも相談できる存在になりたい」と思って仕事をしているので、その言葉は本当にうれしかったですね。自分が目指していたことが、利用者さんに伝わっていたんだと感じられた瞬間でした。

三谷さん(自立訓練担当)
三谷さん(自立訓練担当)

Q. 三谷さんは、日々の支援の中で印象に残っている出来事はありますか。

三谷:派手な出来事があったわけではありません。でも、日々の小さな積み重ねの中に喜びがあります。以前、勉強を頑張っていた利用者さんがいて、塾講師時代の経験を元に試験対策や時間配分などを一緒に考えながらサポートしました。その結果が少しずつ成果につながっていった時は、うれしかったですね。私は62歳なので、定年まであと数年です。若い頃のように「もっと上を目指したい」というよりは、これまで社会からたくさん学ばせてもらった分、少しでも恩返しができたらという気持ちが強くなりました。この仕事を通して、人の役に立てることが、今の私にとって一番のやりがいですね。

Q. 利用者さんを支援する一方で、この仕事を通して皆さん自身が学んだり、成長したりすることもありますか。

三谷:成長した…体重はちょっと増えました(笑)。それはさておき、利用者さんが増えたことで、本当にいろいろな特性や課題を持つ方と関わるようになりました。榎本さんが作成される個別支援計画を読みながら、一人ひとりについて理解を深めています。以前よりも、「もっと勉強しなければいけない」という意識は強くなりましたね。

榎本:たくさんありますよ。例えば、利用者さん向けにストレスとの向き合い方やメンタルヘルスについてのプログラムを行っています。そのために私自身もたくさん勉強するのですが、その過程で「自分自身も学ばせてもらっている」と感じることが本当に多いですね。コーピングなどについて学ぶ中で、「自分は気持ちの切り替えができていると思っていたけれど、実はそうではなかったんだ」と気づくこともありました。利用者さんに伝えるために学んだことが、そのまま自分自身の成長にもつながっています。

北川:私自身が一番成長したと感じるのは、チームで支援することを学べたことです。以前は塾講師をしていて、どちらかというと一人で仕事をすることが多い環境でした。自分の授業をして、生徒さんや保護者の方から信頼をいただければ、それで仕事が成り立っていました。でも、ここでは違います。職員それぞれに支援の考え方があり、それぞれ違った視点があります。意見がぶつかることもありますが、それだけ利用者さんのことを真剣に考えているということでもあります。相手の考えを尊重しながら、自分の考えもしっかり伝える。以前はあまり得意ではありませんでしたが、この1年で少しずつできるようになってきたと感じています。

Q. 支援には一つの正解があるわけではないからこそ、難しさを感じたり、「もっとできたのでは」と考えたりすることもあるのでしょうか。

三谷:以前、放課後等デイサービスで働いていた頃は、子どもたちへの対応に悩むこともありました。リッツではそこまで大きな出来事はありませんが、一人ひとり支援の方法が違うので、「もっと良い関わり方があったのではないか」と考えることはあります。

北川:私は結構感じています。利用者さんの中には、課題となる行動を繰り返してしまう方もいます。でも、厳しく注意すれば良いというものではありません。強く言い過ぎることで、来所できなくなってしまうこともあります。だからといって、そのまま見過ごすわけにもいきません。「今、この方には何を伝えるべきか」「どんな伝え方なら受け止めてもらえるのか」。それを考え続けることが、この仕事の難しさだと思います。何か月も関わっているのに、「まだ力になれていない」と感じることもあります。それでも、その方にとって一番良い支援は何かを、これからも考え続けていきたいですね。

利用者への想いを語り合う3人
利用者への想いを語り合う3人

榎本:私もありますね。面談では前向きな気持ちになってくださっても、翌日にはまた気持ちが落ち込んでしまうことがあります。もちろん、必要に応じて面談は行いますが、面談だけを続けるわけにはいきません。利用者さんにはプログラムにも参加していただき、生活や就労に必要な力も身につけていただきたいので、そのバランスを取ることが難しいと感じます。面談では気持ちが上向いても、それを維持することは簡単ではありません。チーム全体で支えていますが、結果がすぐに表れる仕事ではないので、自分の無力さを感じることもあります。それでも、その方のペースを大切にしながら関わっていきたいと思っています。

Q. 利用者さん一人ひとりと向き合うからこそ、支援する皆さん方自身も迷い、学びながら、より良い支援を考え続けているんですね。

Q. ところでリッツでは、最初から就職という一つのゴールを目指すのではなく、その人の状況に合わせて目標を考えていくのでしょうか。

榎本:現在の利用者さんは本当にさまざまです。リッツが立ち上がった当初は「カレッジ」という考え方でしたが、現在は自立訓練(生活訓練)+就労移行支援という福祉サービスとして運営しています。そのため、最初から就職を目標にしている方もいれば、まずは生活リズムを整えることを目標にされている方もいらっしゃいます。

三谷:そうですよね。私も当初は、「大学のような場所」という考え方があったと聞いています。高校を卒業した後、多くの人は大学へ進学し、4年間かけて社会へ出る準備をしますよね。モラトリアム期間というか。一方で、障がいのある方は、卒業後すぐに就労や福祉サービスへ進むことが多く、そうした「準備期間」が少ないという考えからスタートしたと聞いています。現在は制度に合わせた運営へ変わっていますが、その考え方自体は今も変わっていないと思います。実際に、自立訓練を終えて就労移行支援へ進んでいる利用者さんもいます。制度上の見せ方は変わりましたが、「社会へ出る準備をする場所」という本質は変わっていないと感じています。

Q. では、就職を目指す段階では、どのようにその人に合った仕事を探していくのでしょうか。

榎本:リッツでは「自分を知る」というプログラムを行っています。「自分には何が向いているのか」「自分の強みは何か」を一緒に考える時間がありますので、その中で少しずつ方向性が見えてくることが多いですね。まずはご本人の希望を聞きながらスキルを身につけていただき、その上でハローワークや企業見学なども活用しながら就職につなげていきます。必要に応じて企業見学やハローワークへ同行することもあります。

北川:企業とのマッチングについては、管理者を中心に進めています。利用者さん一人ひとりの特性を踏まえ、「この方には、こういう職場が合うのではないか」と考えながら企業との橋渡しができたらいいなと。一番大切なのは、「その方に合った就職先と出会えること」だと思っています。

三谷:もし本人が希望する職場と、支援者が適していると思う職場が違ったらどうします?

北川:合わない職場を希望しても、ご本人の決定なんですよ。支援員としては、「私はこう思う」「こういうリスクがあると思う」と伝えます。でも、「あなたはどうしてそう思うの?」と深掘りした上で、私の意見、みんなの意見を伝えて、それでも「自分はこれでいく」と決めたのなら、その人にとってはそれが幸せだと思うんです。反対意見も聞いた上で、「私が自分の道を選んだ」というのは、すごい達成感だと思うので、それは応援してあげたいかなと思っています。

北川さん(就労移行支援 職業指導員)
北川さん(就労移行支援 職業指導員)

三谷:ただ、本人が希望していても、実際にはその仕事に就けないこともありますよね。私自身も学生時代、イメージだけで仕事を選んでいた経験があります。本人の希望は大切にしながらも、現実的な情報をきちんと伝えて、一緒に考えていくことも必要だと思います。そのバランスは難しいですよね。

北川:確かにそこは難しいところですね。

Q. 就職が決まったら、そこでリッツの支援は終わるのですか?

北川:支援は就職がゴールではありません。就労移行支援では、就職後も6か月間の定着支援を行います。新しい職場で困ったことがあれば相談に乗りますし、企業の方から「どのように接すればいいか分からない」という相談を受けることもあります。例えば、「一度にたくさんの指示を出すと混乱してしまう方なので、一つずつ順番に伝えていただけると力を発揮しやすいです」といったように、ご本人と企業の間に入り、双方が安心して働ける環境づくりをお手伝いしています。

Q. 最後に利用者さん一人ひとりを支えていくために、これから取り組んでいきたいことはありますか?

三谷:目標は、利用者さんを増やして、定員の20人に近づけていくことですね。そのためにも、日々の支援をしっかり行い、利用者さんに満足してもらうことが大切だと思っています。それが口コミや紹介につながると思いますし、相談員さんや保護者の方との関係も大事にしていきたいですね。

北川:私はこれからも、利用者さんが自分自身のことを理解して、自分に合った職場で働けるように支援していきたいですね。自分がどんな環境なら無理せずに働いていけるのかを知ることも大切です。そのためのお手伝いを、これからもしっかり続けていきたいと思っています。

榎本:私の課題であり目標でもあるのは、チームづくりです。利用者さんに笑顔でいていただくことはもちろんですが、職員にも笑顔で働いてほしいと思っています。福祉の仕事は決して楽な仕事ではありません。だからこそ、「ここで働いていて楽しい」と思える職場をつくりたいですね。そのためには、私自身ももっと勉強しなければいけませんし、職員一人ひとりの声をしっかり聞きながら、より良いチームをつくっていきたいと思っています。それが今の一番の目標です。