【前編】カレーの日にも箸がある? きらめき六区こども園の「失敗も探究」に変える保育

キーワード: 2026年6月1日  きらめき六区こども園、子どもたちの「主体性」、社会福祉法人つくし福祉会

きらめき六区こども園の「失敗も探究」に変える保育

のどかな田園風景が広がる岡山市南区藤田地区。この地域に2026年4月、「きらめき六区こども園」が開園しました。岡山市六区保育園の民営化に伴い、社会福祉法人つくし福祉会がその跡地を引き継いで運営する幼保連携型認定こども園です。

生後57日目から就学前までの子どもたちを対象とした同園では、これからの時代を見据えた新しい保育が始まっています。

きらめき六区こども園が大切にしているのは、自ら考えて行動する主体性やコミュニケーション力といった「人間ならではの力」。

園長を務める荻野佳子先生に、園の教育・保育観や、地域とのつながり、取り組みについて教えていただきました。第1回となる今回は、日々の生活のベースである「食」の取り組みについて紹介します。

失敗は「探究」の入り口。先回りせず、子どもの力を信じる

子育てにおいて大人が先回りし、つまずく原因を事前に排除してしまっては、子どもたちが自ら気付き、問題を解決する力を育みにくくなってしまいます。

きらめき六区こども園の保育で大切にしているのは、子どもたちの「主体性」です。荻野先生はこう語ります。

「大人が教えるのは簡単ですが、子ども自身が気付いたり、お友達が教えてくれたりすることを大切にしたいんです 。園の保育では、子どもたちが自ら考えること、気付くこと、そして日々の生活の中で実際に経験できることを何よりも大切にしています。次にどうすればいいか、自分たちで考えて行動できるようになってほしいですね」。

年齢で区切らず、一人ひとりの発達に寄り添う

子どもの主体性を重んじる姿勢は、日々の活動の捉え方にも現れています。きらめき六区こども園では、一律に「年齢」だけで子どもを区切ることはしません 。同じ年齢であっても、発達のペースや興味の対象は一人ひとり異なるからです。

そのため、制作物などの活動では、あらかじめ難易度の異なる選択肢を複数用意し、子ども自身が「これならできるかも…」「これに挑戦してみたい!」と思うレベルを自分で選んで作れるようにしています。

「この年齢にはまだ難しいかな」と枠にはめるのではなく、一人ひとりの発達に寄り添い、「もっとやりたい!」という子どもの熱意を大切にする環境づくりを行っています。

地元高校とも交流。地域に開かれたこども園を目指して

藤田地区は、地域の関わり合いが強い地域だそうです。前身の園では地域の方々が運動会に来てくれるなど温かい交流があり、新しい園のスタートにあたっても「畑をやるなら声かけて!」と近隣の方から声をかけてもらうなど、すでに協力体制が生まれつつあります。

このような地域性もあり、近隣にある岡山県立興陽高校とも関わりを持っています。たとえば、5歳児たちが農業科のビニールハウスへ行って高校生に教わりながら野菜の苗を選んだり、家政科で保育士を目指す生徒が園の見学に来たりしています。こども園と高校と年5回の行き来をする予定だといいます。

子どもたちと高校生との交流を通して、世代を超えて学び合い、成長し合う関係が生まれています。

カレーには箸?スプーン? 自分で選ぶランチルーム

3〜5歳児が一緒に食事をするランチルームも、子どもたちの「考える力」や「気付く力」を育む場所です。

ランチルームの目的は、お友達や先生と楽しく食事の時間を過ごす「共食」にあります。異年齢の関わりのなかで刺激を受け、会話が増えるだけでなく、自分で選ぶ経験を日々積み重ねています。

ランチルームでは、子どもたちが自分で席を選び、食べられる量を考えながら給食当番の5歳児や先生に増減を伝えます。さらに、箸やスプーン、フォークなどのカトラリーも、メニューに合わせて自ら選びます。

例えば、メニューが「カレー」の日。ランチルームにはいつも通り、箸やフォークも一緒に並べられています。

「あえて保育士からスプーンを勧めることはしていません。実際に食べ始めてから『食べにくいな』『スプーンの方がよかったかもしれない』と子ども自身が気付くことを大切にしています。それは失敗ではなく、『探究』の一つだと考えています」。

後編に続きます

第2回となる後編では、園で大切にしている「硬筆」「野菜栽培」「足指遊び」といった特徴的な活動や、五感を刺激するこだわりの園庭環境についてご紹介します。