考え、挑戦し、助け合う。3つの活動と園庭に込められた「大人が決めつけない」保育 ~きらめき六区こども園 後編~

キーワード: 2026年8月1日  きらめき六区こども園、子どもたちの「主体性」、社会福祉法人つくし福祉会

~きらめき六区こども園 後編~

自分たちで育てたキュウリを、はさみで一つひとつ丁寧に収穫します

前編では、子どもたちの主体性を引き出すランチルームの取り組みや、地域とのつながりについて紹介しました。後編では、きらめき六区こども園が取り組む3つの特徴的な活動と、五感を刺激する園庭環境について、荻野佳子園長にお話を伺いました。

就学に必要な力が遊びながら身につく「硬筆」

5歳児が取り組む「硬筆」。背筋を伸ばし、集中して文字と向き合います

きらめき六区こども園では、5歳児を対象とした「硬筆」を始めています。和井田保育園で20年にわたり続けてきた活動で、硬筆の師範免許を持つ荻野先生が指導を行っています。

その目的は、単に文字を書く技術を身に付けることではありません。「小学校への憧れ」を大切にしながら、「知らないことを知るって楽しい!」と感じてもらうことを目指しています。

例えば、特定のひらがなから始まる言葉を順番に発表するゲームでは、既に出た言葉は使えないため、お友達の話をしっかり聞くことが必要です。子どもたちは「雲」と「蜘蛛」の違いに気付くなど、遊びのなかで多くの学びを得ています。

「子どもたちは本当に気付きの天才なんです。また、言葉を発表する遊びを取り入れることで、先生が注意しなくても自然とお友達の話を静かに聞くようになります。そうした経験が、就学後に必要な力につながっていくんです」と荻野先生。

和井田保育園でも、「今度はいつするん?」「早く日にちを決めて」と子どもたちが心待ちにしていたという硬筆の時間。保護者から「子どもの自信につながった」「好きなことが見つかった」という声が届くことも多く、自ら進んで書道を始める子もいるそうです。

「何を植えよう?」から始まる野菜栽培

興陽高校のビニールハウスへ。高校生に教わりながら、自分たちで選んだ野菜の苗

野菜栽培は、「何を植える?」という話し合いから始まります。

子どもたちは図鑑で調べたり、家庭で話題にしたり、買い物の際に野菜を観察したりしながら、植えたい野菜を考えます。ピーマンやトマト、キュウリ、トウモロコシが人気なのだそう。

苗を植え、支柱を立て、毎日の水やりまで。畑の世話はすべて子どもたちの手で

その後、農業科がある興陽高校のビニールハウスを5歳児たちが訪れ、高校生から教わりながら、自分たちで苗を選んで購入。園の畑に植え、支柱を立てるところから、毎日の水やりまで、すべて子どもたちで行います。

収穫した野菜は給食で味わうほか、参観日には保護者と一緒に収穫を楽しむことも。

きらめき六区こども園の畑では、野菜だけでなく、子どもたちの小さな自信も日々育っています。

遊びながら体幹をきたえる「足指遊び」

素足でおこなう「はだしdeサーキット」。障害物をまたぎ越え、体の使い方を覚えます

近年、足の指が地面にしっかり接していない「浮き指」が子どもたちの間で増えていると言われています。そこで同園では中国学園短期大学の戸田先生の指導のもと、「はだしdeサーキット」という足指遊びを取り入れています。

和井田保育園でも続けているこの取り組みは、遊びを通して体幹や運動機能を育むことを目的としています。

平均台の上に置かれたゴムボールを踏まないように飛び越える「平衡性」、ジャンプだけでなく、ずり這いや仰向けなど思い思いの姿勢で進む「移動性」、足の指を使って物をつかみ、カゴへ入れる「操作性」。この3つの要素を組み合わせたサーキットを、子どもたちは夢中になって楽しみます。

「子どもたちは、自分が好きなところを何度も繰り返して遊ぶんです。できるようになるまで挑戦し、『次はこうしてみよう』と工夫するなかで、自然と体の使い方を覚えていきます」と荻野先生。

バランス遊具に夢中の子どもたち。遊びながら体幹と平衡感覚を養います

また、同園では「1歳だからできない」「2歳だからまだ早い」と、大人が先に決めつけることはありません。発達に応じた環境は整えながらも、「やりたい!」「もっとしたい!」「好きなことをもっともっと!」という気持ちを大切にしています。

できないことがあれば、友達に「手伝って」と声を掛けたり、反対に手を差し伸べたりすることも。遊びを通して体幹や運動機能だけでなく、コミュニケーション力や社会性も育まれていきます。

創造性や協調性を育む、自然豊かな園庭

高さ約2メートルの築山。ロープや石を頼りに、手足の置き場を自分で考えて登ります

園庭には、一般的な大型遊具はありません。その代わり、子どもたちの可能性を引き出す工夫がいたるところに施されています。

園庭中央にある高さ約2メートルの「築山」は、ロープや石を使い、自分で手足の置き場を考えながら登ることができます。築山の周囲は乗り物用のコースにもなり、『見えないところから他のお友達が飛び出してこないか?』といった、周りをよく見る力につながっていきます。

また、3人乗りのブランコや手押しポンプは、一人では遊ぶことができません。「押して」「代わって」と声を掛け合うことで、思いやりや協調性が育まれていきます。

五感を刺激し、防災も想定した遊び場

園庭に植えられた果樹や四季折々の草花。見て、触れて、匂いを感じて五感を働かせます

園庭には、ブルーベリーやさくらんぼ、はっさく、栗などの果樹のほか、くちなしや沈丁花、さざんかなど四季折々の植物が植えられています。

子どもたちは見て、触れて、匂いを感じ、味わいながら五感を働かせます。イガグリに触れてトゲの痛みを知り、「どうしたら中の栗を取り出せるだろう」と考えることも、学びの一つです。

また、これらの植栽は、地域の防災対策として非常食の役割も担っています。地下には雨水タンクが埋設されており、災害時にはトイレ用水として活用できる仕組みも整えられています。

さらに、園庭の一角には「いろり」が設けられています。興陽高校で収穫したサツマイモを持ち帰り、焼き芋をすることも計画しているのだそう。ここでも子どもたちは、火の温かさや煙の匂い、焼き芋のほっくほくの食感などを五感で味わいます。

「自然との触れ合いを通じて、子どもたちの創造力や発想力、協調性を育む遊び場にしたい。そして、地域と園が支え合える場所になれば」…。ここは、そんな荻野先生の思いを藤田地区の造園業者が形にした園庭なのです。施工には、興陽高校造園科の生徒たちも携わっています。

岡山県全域から選ばれる園を目指して

大型遊具のない園庭。築山やトンネル、タイヤの階段で全身を使って遊びます

硬筆で学ぶ楽しさを知り、野菜栽培で育てる喜びや難しさを味わい、足指遊びで自分の体と向き合う。そして、五感を刺激する園庭で日々新しい発見に出会う。

「当園が大切にしているのは、子どもたちの可能性を大人が決めつけないこと。一人ひとりの『やってみたい!』という気持ちは止められるものではなく、止めるべきでもないと考えています。岡山県全域から選ばれる園にしていきたいですね」と荻野先生。

2026年9月には内覧会を開催予定。また、9月中旬から下旬には入園説明会、11月には令和9年度(2027年度)の入園申し込みが始まります。地域や高校とのつながりのなかで育まれる、新しいこども園のかたち。その魅力を、ぜひ現地で感じてみてください。